固定残業制(定額残業制・一律残業制・みなし残業制など)の導入について考えてみましょう

こんにちは!
ここのところ「固定残業」制度の導入についてのお問い合わせが多いので、今日は少し解説をさせていただこうと思います。

固定残業制(定額残業制・一律残業制・みなし残業制など)とは、実際の残業の有無にかわらず、毎月、一定時間の残業等(時間外・深夜・休日労働など)の割増賃金を支払うものを指します。
例えば、固定残業制の残業時間を「20時間」と設定していた場合、実際の残業時間が5時間だったとしても20時間分の残業代を支給するということです。

ここで間違えてはいけないのが、20時間の固定残業を設定しているからと、20時間以上の残業が発生した場合は「残業代は支払わなくてもよい」という誤解です。固定残業の20時間を超えた残業については、20時間を超えた分の残業代の支払いが必要になります。
となると、固定残業制度の導入は、経営者にとってなにもメリットがない制度のように思われる方もおりますが、そうではありません。固定残業制の範囲内での残業時間であった場合、毎月の給与計算の工数が削減できます。

また、従業員は予め労働時間が定められるため、過度な残業や長時間労働を強いられることが減ります。これにより、従業員のワークライフバランスが改善され、健康な労働環境が整えられることが可能となります。

ここまで「固定残業制」について解説をしてきました。 固定残業制を導入する際には、次の点に注意して、運用してください。

★就業規則や雇用契約書では適切な表示をしましょう。
①雇用契約において、誤解を招く表現をしないようにしましょう。
悪い例     × 給与229,080円(固定残業手当含む)

良い例     〇 基本給200,000円+固定残業手当29,080円(固定残業時間20時間相当)
※残業時間が20時間を超えた場合は、その超えた分の残業代を追加して支給する。

②「固定残業制」の適用範囲を明らかにしましょう!
賃金規程や雇用契約書、労働条件通知書において、固定残業制を「適用する範囲」を明確にしましょう。
※総務部、営業部がある会社の賃金規程の記載例
第〇条    固定残業制は営業部のみ採用することとする。

★残業時間を適切に管理しましょう!
実際の残業時間が固定残業に満たない残業時間だとしても、残業時間の管理は必ず行いましょう!
※給与明細では、時間外労働の時間数と時間外手当の額を明示することが望ましいとされています。

固定残業手当を超過した分の残業手当を支給する場合は、その金額に加え、超過した時間数や計算方法も併せて記入しておくとよいでしょう。

★基本給や諸手当を変更した場合は、固定残業代の変動に注意!
基本給や諸手当を変更した場合、残業代の基礎単価が変更となるため、固定残業代の金額も変更となります。新たに雇用契約書等を作成する際や給与計算を行う際には気を付けましょう。

会社で「固定残業制」を導入したい、就業規則を作成したい等のご要望や本制度に関するご相談がありましたら、あすか社会保険労務士事務所 就業規則サポートセンターにお問合せください。

《この記事を書いた人》

永井正勝/社会保険労務士 歴28年
川崎市役所、独立行政法人環境再生保全機構、総務省年金記録確認神奈川地方第三者委員会の職歴を経て、平成19年に社会保険労務士登録。平成20年にあすか社会保険労務士事務所を開業。「人を大切にする企業づくりから、社会に誇れる企業」へと成長する支援に尽力する『誠意の社労士』

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